■カーリング日本選手権を終えて  その2

女子の戦いはもっと壮絶でした。
下馬評通りなら、決勝戦はLS北見と北海道銀行だったのでしょう。
でも、その場に立ったのはLS北見と中部電力でした。

去年、北海道銀行は富士急に敗れて、決勝に進むことができませんでした。
その試合を会場で見ていて思ったことは、「勝つことを期待されている重荷」というのが存在するということ。
あの時、富士急はチャレンジャーだったんですよね。
予選の序盤で調子が上がらなくて3連敗からスタートして、それでもタイブレークでプレーオフの権利を手に入れいて。
そう、勢いがありました。

その背景を後で知った時、彼女たちの力だけではないものがそこにはあったのかもしれないとも感じましたが、それでも、舞台に立ったのは彼女たちです。
彼女たちがチャレンジャーとして、立ち向かった結果、道銀は準決勝での敗退になったのです。

道銀が平昌オリンピックに行くためには、もう、今年の日本選手権で優勝する以外の選択肢はありませんでした。
それはLS北見以外はみんな条件が一緒です。

ラウンドロビンを見ていてもかつての道銀の強さは感じませんでした。
派手なショットが決まっていてかっこよかったりもするのですが、スキップが難しいショットを投げるということは相手に攻め込まれている証拠なのです。
どうしちゃったのかな?とも思いましたが、これが今の道銀なのか、と受け止めました。
小笠原さん、船山さんは女子カーリング界を牽引してきた方達です。
彼女たちの活躍がなかったらこれほど多くの人にカーリングを見てもらえなかったかもしれません。
私も、トリノでの彼女たちの試合を見て、「面白い!」と思った一人でしたから。
残念でもあり、そうやって時代は動いて行くものなのかもしれないとも思っていました。

LS北見も最初は調子が上がらないな、と感じてましたが、試合を追うごとに、強くなっていく感じはこういう長丁場の戦い方を知っているな、と思わせるものでした。
本人たちもまさか決勝で中部電力に負けるとは思わなかったと思います。

中部電力の優勝を地の利だと言っていた人もいました。
けれど、中電は予選と、プレーオフの2回もLS北見に負けているのです。
ホームリンクのアドバンテージが慣れている氷だというのだとしたら、それもちょっと違います。
アイスメイクは「日本選手権用」にチューニングされるので、いつもとは違うのです。
それに決勝の応援席はLS北見の旗を持った人で溢れかえっていました。

唯一、アドバンテージがあるとしたら、試合の後、自宅に帰れることかな?
きっとそのくらい。

私は中電が勝つことをどこかで祈っていました。
LS北見が強いことはわかった上で。
それはここに来るまでに中電というチームが乗り越えたモノが、彼女たちを強くしたと信じたかったから。

日本選手権5連覇の中部電力はもうそこにはありません。
藤澤さんがLS北見に移り、市川さんが退社され、新しいチームで始動した年、彼女たちは日本選手権にすら出ることができませんでした。
軽井沢の地元の強いジュニアのチームに負けてしまったからです。
名前だけが先行するから、不甲斐ないと叩かれたこともあったと思います。
ある意味、彼女たちも勝ちを期待されながら、勝てなかったという重荷を背負って、戦ってきたのです。

なのに、決勝の前にあったメンバーの顔からは悲壮感は全く感じられませんでした。
むしろ、その状況を楽しんでいるようなそんな空気すら漂っていたくらいです。
反面、LS北見は少し緊張した面持ちで会場入りしていたくらいです。
勝ち続けるプレッシャーは計り知れないモノがあるのかもしれませんね。

決勝戦は本当に痺れるゲームで。
相手が点を取れば、こっちも取る!
厳しいショットを相手が決めたら、それで応酬する、と。
途中までどっちが勝ってもおかしくない展開だったんじゃないかな、と見ていても思いました。

試合を決めたのかな、と感じたキーショットは藤澤さんと松村さんのテイクショット。
神業みたいな藤澤さんのテイクが決まった時、あ、流れを持って行かれた、と一瞬だけ、思いました。

相手のスーパーショットが決まると、普通のスキップは、やっぱり人間なので、凹みます。
自分のショットが決まらなかったら、流れも、点も持って行かれる、というプレッシャーも半端なかったと思います。
でも、松村さんはその動揺を感じさせず、見事にダブルテイクショットを決めたのです。


↓これ(2:05:03ごろ)


LS北見 vs 中部電力 カーリング女子決勝2017年2月5日


武者震いしましたよ、その瞬間。
あ、これで試合を決めたな、と空気が動いたのを感じました。
その後、淡々と勝ちに向かって進んだ中部電力が3度目の正直でLS北見に勝ち勝利を手にしたのでした。

優勝した中電のメンバーが喜んでいる姿に私も目を潤ませていたのですが、普段、全く、涙なんて見せない、カーリング関係者が号泣しているのを見て、ああ、彼女たちの努力を身近で感じていた人にとっては本当に欲しい勝利だっただな、と感じつつ、その号泣っぷりに当てられて、私まで引きづられて涙が止まらなくなっていました。

でもこれは平昌オリンピックに向けた序章でしかないのです。
LS北見と中部電力は9月に常呂で行われる代表決定戦で、オリンピック代表の座を勝ち取らなければならないからです。
(ちなみにまだ、日本のオリンピック出場も決まったわけではありません。昨年の世界選手権の結果、獲得したポイントが高いため、可能性が高いとされているだけです)


その時、どっちが勝つか、想像ができません。
LS北見が違う強さを身につけてくるかもしれないし、中部電力が若さの爆発力を見せてくるかもしれません。
戦う本人たちにとっては、なかなか代表に決まらない大変さもあるとは思いますが、私はワクワクしています。
強いチームが切磋琢磨していくことでより強くなれると思うからです。

海外では今の時点の平昌オリンピックの女子カーリングは「銅メダル」をとる予想を出していました。
すごいですよね、、、。
それを見て、きっと、その場所を目指す彼女たちは思っているかもしれません。
目指してるのはもっと輝くメダルよ、と。

私も見たいな。
笑顔で輝くメダルを手にするみんなを。
できたら、現地で。