■歳を重ねること

先週末、友人からある方の訃報が届きました。
学生の時に参加したボランティア活動の組織を立ち上げた方です。

もう、それは、随分と昔のことです。
私が大学の頃、世界の政治構造が大きく変わった時期でした。
ベルリンの壁が崩壊したり、天安門事件があったり、ソ連がロシアになったり。
もともと歴女だった私にとっては、リアルタイムで歴史が変わっていく面白さがあって、そういうことを勉強したくて、ゼミで国際関係論を選んだのです。
本当に政治が面白い時代でした。

せっかく世界のことを勉強しているのだから、現地を見てみたい、という私にボランティア活動に参加することを進めてくれたのは、大学の教授でした。
そんなこんなで私の生まれてはじめての海外旅行(旅行ではないけど)は、アエロフロートで向かう、ロシアの極東地区、ハバロフスク、ウラジオストクという街になったのでした。
当時のロシアは、ソ連邦が崩壊し、新しい社会構造に変わっていくための生みの苦しみを味わっている最中で、社会主義で支えられていた社会的弱者である子供や、老人は生きていくのも大変な状況に置かれていたのです。
日本から寄付された衣類や食料を持って、老人ホーム、独居老人、そして、孤児院への訪問するというプロジェクトに私も参加させていただきました。

20歳そこそこの私にとっては何もかもが衝撃的でした。
街の雰囲気は灰色で冷たくて、デパートにものは揃っておらず、子供たちは路上でモノを売っていたり。
1月の極寒のロシアは忘れられない体験になりました。

行くまでの準備の中で、現地で、彼の体験談を聞かせていただきました。
興味深くて、面白くて、大人の世界を垣間見ている気がしたのです。
あの頃の私にとってはとてもかっこいい大人であり、大人であることへの憧れを持たせてくれた方でした。
尊敬できる人でした。
さらに、そこで知り合ったたくさんの仲間は私にとっても宝物でした。

残念ながら、私も最近は疎遠になっていて、どんな風に過ごしていたのかは知りませんでした。
年齢を聞いても、ああ、充分に人生を生ききったんだろうな、と。

私も程よく歳をとりました。
私を取り巻く人たちも、同じようにと歳をとって行くのだな、という現実を噛み締めています。
たくさんんの気づきをくれたり、様々な指針を見せてくれた人たちが遠くへ行ってしまう、そんな時期がやってきたのだな、と。

私がこうやって生きてきた過程でたくさんの人に出会っています。
人生を劇的に変えてくれた人たちもたくさんいます。
そういういう人たちに出会えたからこそ、その人たちが見せてくれた世界があったからこそ、今の私はここにいるし、自分の後から歩いてくる人たちに少しでも、そういう何かを還元できたらと常々、思っています。

そうやって受け継いでいくものも大事なんだと、歳を重ねたからこそ、気づけたことなのかな、と思っています。
たくさんのことを教えていただきありがとうございました。
走り抜けた人生だったと思いますので、少しのんびりしていただければと思っています。
心よりご冥福をお祈りさせていただきます。